スンジエーネ
夏至前後。長雨のせいか、まったく実感がない。かぼちゃだ、ゆず湯だ、と冬至には何かと象徴もあるが、夏至にはない。気候のせいだろうか。なぜ、かぼちゃか、ゆず湯か、と問われれば、それなりの説明がある。保存がきく食品におけるビタミンの問題であったり、すぐれて生活科学の範疇だ。夏至にはない。キャンドルナイト、か。
夏至で何かないかと、急に思い出す。夏至の夜に、空が開く。エリアーデ。おそらく、15年ぶりか、それ以上でページを開く。よくまだ本棚にあったものだと思うが・・・。それにしても、全く想い出せない。どのページを開いても、ほぼ、記憶がない。解説も読んでみると、丁寧にあらすじが書かれているが、これを読んでもろくに記憶がない。大学の後年くらいの頃に、それなりに胸動かされて読んだはずなのに。
美しい装丁は印象的だ。手に取った感触も覚えている。中身は全く覚えていないのに。
スンジエーネ。原題で、妖精たち、とか。妖精、白夜、空が開く。ルーマニア、きっと夏とは言えしんと冷え込んだ夜中。手の中の、本の重さ。工夫した装丁の手触り。
アフォーダンスがよみがえらせる記憶。奥付をたどる。間違いない。あの冬、出版直後に買って読んだ。煮え切らずに放浪する主人公に、迷う自分を重ねて、読み終えた深更、白み始めた空にまた、白夜を重ねたのを思い出す。
夏の夜。記憶。キャンドルに重ねるのも面白い。何かのモチーフになりそうだ。
「妖精たちの夜」 ミルチャ・エリアーデ 住吉春也訳 作品社