咽周囲の構造を見てみると、廃熱するために必要な構造があると書きましたが、下記の筋肉図を見てもよくわかると思います。特徴的なものが舌骨周囲にある筋肉の位置関係です。 舌骨を中心にして肩、胸骨、乳様突起、茎状突起、下顎を空中で操り人形のように引っ張っているようにも見えます。 基本的に舌骨は中に浮いた形になっているので、他の筋肉との接合がなければ落ちてしまいますが、頭蓋骨の底部、下顎、胸骨、肩甲骨を操っているようにも見えます。 そこで、坐位で舌骨に軽く触れ、舌骨をイメージングしながら皮膚張力検査を行うと、舌骨が中心軸に対して、どの位置にあるのかを診断することができます。舌骨の位置によって、下顎、頭蓋、胸骨、肩甲骨の状態がわかれば、どちら側にどんな緊張があるのかを簡単に見極めることができるということになります。 例えば、舌骨の左側が下がっていたとすると、茎突舌骨筋や顎二腹筋の後方が引っ張られた形になります。つまり、茎状突起や乳様突起付近は筋肉が引っ張られて緊張したように感じられるのです。一般的には緊張しているという表現は筋肉が収縮していると感じる方があると思いますが、実際には、引っ張られた筋肉が硬く緊張しているように感じられます。収縮して緊張しているように感じるのは余程縮んでいる時だけです。そこまで縮んでいると対になっている筋肉はパンパンになっているはずですので、そちらの緊張の方が強いと感じるはずです。 弛緩している筋肉が緊張しているというのが実際には正しい観察ですので、舌骨が左へ下がっているように思えば、その上の顎二腹筋や茎突舌骨筋は引っ張られていることになり、緊張しているように感じられるという訳です。 逆に肩甲舌骨筋は縮んでいるので、感覚的には緊張しているとは思わないのが普通です。舌骨を観察するだけで、首や肩まわりのアンバランスをこれだけ観察することができるのです。しかし、舌骨は左右の傾きだけではなく前後に移動したり、片側だけが巻き込むような形になったりします。右に巻き込むような変化をしている場合、顎二腹筋や茎突舌骨筋、肩甲舌骨筋は全て弛緩し、緊張しているように感じられるという訳です。舌骨を中心にして、片側の前頚部を四つの区画に分けるとその様子がよくわかるかもわかりません。例えば舌骨の左後側の上下が緊張しているように感じられたら、舌骨は右に巻き込んでいると解釈できます。これをトリックモーション検査法で行うと一瞬で判断できますので、この診断も時間がかかりません。また条件付けとして、一番緊張している区画という条件を与えれば、その方向に一番緊張(引っ張られた緊張)があると考えられるのです。 面白いと思いませんか? こういう診断は、カイロプラクティック等の方法で診断すると診断するだけで、かなりの技術がいるはずですが、トリックモーション検査法なら一瞬です。 そして、舌骨の位置と肩甲骨の位置を観察すると肩の痛みが舌骨の位置とも深くかかわっているというのがわかります。つまり、肩の痛みに対して、咽の状態を観察するというのは常套手段であり、必要不可欠な診断だといえるのです。それを行わないと正しい結果は得られないのです。 位置関係をしっかり把握するという方法は臨床上とても重要ですが、それを可能にするのもイメージングと筋力検査があってこそです。舌骨を少しでも強くおさえると患者さんに不快感を与えます。最初は実際に触診して診断した方がわかりやすいのですが、この触診の仕方にちょっとコツがあります。軽く触れる程度、又は全く触れないで診断する必要があります。軽く触れるというのは皮膚と指先が触れるか触れないかで診断できなければなりません。そのためにもイメージングがしっかりしていないとうまく診断することができないということになるのです。 区画に複数の緊張がみられる場合、どれが最優位なのかを考え、どの方向の筋肉がひっぱられているのかをイメージしなければなりません。 トリックモーション検査法なら、まず左右で優位診断し、左なら左の区画を再度優位診断します。そして1~4までを再度優位診断すればわかりますので、数秒で診断ができます。 顎の位置が全体的に前にでている場合、どこが一番緊張しているのかを判断するのはとても難しくなります。このような場合もトリックモーション検査法で最優位を決めれば簡単に決まります。ただ条件付けだけはしっかりと行って下さい。
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