「気」の診断をするためにはストーリーを描くということが大事だと書きましたが、気水血や虚実、寒熱によってでてきた異常反応部位を中心にして、深さを変えてみてはどうかという考えがなりたちます。
つまり表、半表半裏、裏 という考えです。中医学には、八綱弁証という考え方があり、陰陽、表裏、虚実、寒熱という基本的な要素を舌診や脈診、切診等で観察していきますが、あくまでもそれは、ストーリーを描くための手だてなのです。気の診断によって得られる情報のストーリーは非常に深いものがあります。解剖図を横に並べて、たどっていくと部分的な反応がでているのがよくわかります。詳細になればなる程、ストーリーが複雑にはなりますが、それによって症状が緩解した時には、一つの疾患と一つの臓器が何らかの関係を持っていると想像することができるのです。
例えば首の痛みに関して左右の痛みは腕が関係し、前後の痛みは咽が関係するという事実があります。右を向いて痛みを感じる場合、手三里あたりを刺激すると、即効的に改善することがあります。しかし、前後を向いた時の痛みは、そう簡単ではなく、咽の深くに熱が入り、「血」の流れが悪くなったという反応が出現してきます。咽頭筋という筋肉が咽の周囲にありますが、特に中咽頭収縮筋が重にやられると舌骨付近で著しい圧痛を認めます。

またオトガイ舌筋や、舌骨舌筋といった舌を前にだした時に関係する筋肉にも影響をあたえています。下記の図は頭を縦割りにした図ですが、延髄や橋、小脳といったところにも関係があり、鼻腔にも反応がおこります。

患者本人に聞くと、鼻の奥が熱いような感覚があるが、体温は高くないといいます。つまり身体全体で起こっている熱ではなく、部分的に起こっている熱だということがいえます。首の痛みでなくても頭部の熱感は、だいたいこういうところから起こってくると考えられるのです。
このような反応は深部の図をイメージングしてはじめて理解できることです。また首の痛みと咽がどうして関係があるのかということを気の診断上説明するのに効果的です。症状として、物を飲み込んだ時にも痛みがあるといいますが、これを西洋医学ではどう説明するのでしょうか?
咽頭収縮筋の上中下の中部が特に強い反応を示した時に飲み込んだ時にも痛みがあると思いますし、この熱をとるために身体全体の調整をしないと駄目な場合も多く、時間もかかることも多いようです。あまりこういう症例は見かけませんが、酷い時には本人は唸るほど痛みを訴えます。車にも乗れない状態になったりしますので、非常に辛い状態になります。痛み止めも殆ど効果がない場合が多く、一般的な処置ではたちうちできないでしょう。
また熱があるということは、そこに「血」が集まっているということでしょう。欝滞した「血」があるのですからそれを流してあげてないと駄目です。単純に冷やすという行為をしてしまうと回りの組織にも影響が起こり、逆に治りが悪くなってしまったりすることが予測されます。
しかし、「気」の診断上、熱と「血」の反応が強いのですから、冷やした方が良いと考えられます。ではどうすれば良いでしょうか?
それは冷やす面積を一点に絞り込むということをやるわけです。つまり、舌骨付近を保冷剤で冷やす訳ですが、面積としては1㎝以内にすると効果的です。
物理刺激も範囲を限定して行うと良い刺激になります。考えもなしに、ただ冷やせば良いと思って冷やすと後で酷い目にあいます。
また冷えが必ず足にでていることが多いので、足をあっためて、咽の一部を冷やすというのを繰り返すと、治りが早いのです。
ストーリーを描くというのは、様々な角度から観察した結果を元にその反応をなくしていく手だてを考えるということに他なりません。こういう現象がわかるのも気の診断を詳細にやっているからであり、何気なく行っていれば、何もわかりません。
基本は、陰陽表裏虚実寒熱と気水血です。これらを元にして深い臓腑の器官を詳細に調べることで一つのストーリーを描くことができるとパターン認識ができます。パターンさえつかんでしまえば、どの程度の刺激で、どれぐらいの自然治癒が起こるかを予測することも可能だといえます。
如何でしょうか?
少しは気の診断についてご理解頂けますか?