前回は、「気」の反応としての中立のバランスについて、書きましたが、中立は各関節でも起こります。
中立になると右を向いても、左を向いても変わりのない動きをします。顔を右向けた場合、左向けた場合、同じような動きをしていれば中立ですが、よく観察すると首の上部と下部では違った動きをすることがあります。
頚椎上部に手をあてて、左右を向かせる(上部頚椎のみ回旋させる)と皮膚の張力が違う場合があります。例えば、左を向いた時に左の上部頚椎に皮膚張力が発生する。又は右の上部頚椎に皮膚張力が発生するという状態であれば、普段左を向くときに下部頚椎から下(体幹部を含む)を余計に動かして、左へ振り返っているということになります。

上部頚椎は、回旋運動に関して、大きな働きをしますので、頚椎症や鞭打ちなどの症状に関しては、首だけを調整しても問題が解決しないということになります。何故なら頚椎の異常によって起こった腰椎や胸椎の過剰な回旋運動を阻止しないと頚椎が正常に働かない状態になってしまっているからです。頚椎上部だけを観察する場合、頚椎下部以下の状態をじっくり観察しながら調整を行う必要性がでてきます。
これは、頚椎が一次的に運動障害を起こしたことを脳神経が認識してしまうと、それがショックになり、他の下部頚椎や胸椎、腰椎において過剰な回旋運動が起こるような命令が送られ、頚椎を守ろうとします。損傷の直後の一次的には、この働きはとても重要なのですが、頚椎の損傷が治っているのにもかかわらず、その信号が脳神経から常時送られてしまうと首の動きは制限されたままになり、上部頚椎は運動できなくなってしまい、筋肉の硬化が起こってしまうのです。通常の捻挫を考えればわかりますが、足関節捻挫は、数日間で良くなることが殆どです。頚部捻挫が何故あのように長い時間をかけて固定する必要があるのでしょうか?
単純な疑問ですが、大きな疑問です。長時間固定をするということは、首を守った状態、つまり脳神経系は首を動かしてはいけないと勘違いする時間を多く作ってしまうのです。もちろん骨が折れているというなら話は別ですが・・・。
腰部捻挫(ぎっくり腰)や頚椎捻挫(鞭打ち等)に関しては、初期段階でうまく動かす運動をさせないと後遺症が残ってしまうのは当たり前ということになります。もちろん首の筋肉は、非常にデリケートにできていますので、鞭打ちを起こした直後は、頚椎カラーをつけて、頚椎を固定することに意味はありますが、思ったより早くに頚椎に少しずつ負荷をかけていかないと頚椎の正常な運動ができなくなってしまいます。しかし、脳神経に近いという理由もあり、恐怖感が腰部捻挫より大きく、神経が不安定になってしまいます。この精神不安が鞭打ちを更に悪化させているのですが、医師の指導の下では、頚椎に長期間、負担をかけないようにさせることが殆どであり、これが頚椎の硬化を招き、下部頚椎以下の運動を過剰にさせ、全身へと波及していってしまうのです。こういう身体の事実を知らないで放置しておくと、鞭打ちを起こした直後の状態と同じ信号が脳から送られ続けることになり、神経が不安定になることで、様々な症状がでてきます。これは、首の筋肉が正しく使われないことで硬化してしまい、脳に十分な血液を供給できなくなってしまうからだと思います。
鞭打ちからくる様々な症状は、可動域をよく観察し、正しく動かして、脳神経に動きを妨げなくても大丈夫だということを認識させていく処置をしていけば決して難しい状態にはならないはずですが、今の整形外科的な考えでは、こういう考え方がないので、なかなか思ったような効果がでない、又は、後遺症を起こしてしまうという問題が起こってしまうのでしょう。
このような現象は、足関節捻挫や膝関節症等の関節障害にも多くあらわれ、徐々に姿勢が悪くなってしまい、全身に影響を与えてしまうのです。こうなったら、全身の状態を観察しながらの長期治療が必要になってきます。
しかし、整形外科的には、そういう処置は認められていないので、我々は長期治療が必要になった状態でしか、身体を診ることはできません。 余計なお金と時間を費やしてしまう鞭打ちの治療をもう少し見直して貰えたらと思ってしまいます。
全身を観察しながら部分を診ていかないと、決して問題は解決しないのですが、問題が解決しないからという理由でしか、我々のような実費診療のところへは、来院しないのですから、やるせない気持ちになってしまいます。
関節の中立状態という話に戻すと、左に回旋しにくい状態が起こっていると、右には逆に過剰な回旋運動が上部頚椎に起こってしまうことが普通です。長期化した場合には右も左も回旋しにくいという状態が起こりますが、そうなってしまうと全身症状が更に悪化し、複雑になってしまっている状態ですので、複雑な処置が必要なのですが、そんなに全身への影響が起こっていない場合で、右に回旋しやすく左に回旋しにくい状態の人の全身治療を行い、脳神経系に正しい情報を流してやると、瞬時に左に回旋しやすくなります。再度観察すると、右に回旋しにくくなっているという現象が起こります。当然といえば当然なのですが、 本人が驚く程の違いが起こってしまいます。
つまり、中立ということは一つが動きやすくなれば、他は動きにくくなります。気の中立のバランスのところでも書いたように、一つの大きな異常経気が消失に近い状態になると他の異常経気が余計に高くなったりするのは、そういう理由と同等だと考えられます。
私は、身体の現象と気の反応はマッチしていなければならないと考えて治療を行ってきましたが、この現象はあきらかに同一の現象だと認識しています。また頚椎ばかりではなく、手首の腱鞘炎や長期間の肩凝り等も脳神経系の異常な信号が長期間送られ続けた結果起こったものですので、その信号をうまく調整してあげれば、大きな刺激をすることなく、治療することが可能となるのです。
もっともっとこの事実を沢山の人に知って貰いたいと思いますが、なかなか伝わりませんね。単なる鞭打ちが後に様々な後遺症を残してしまう結果になったりするのですから、恐ろしい話です。
私がいつもいうように、これらは科学的な証明はできません。何故なら脳神経系はまだまだ科学で解明されていない分野であり、追いついてないからです。鍼治療や気功治療は、脳神経系にダイレクトに刺激します。それは人間の感覚を最大限に使う方法だからです。目に見えない力は存在します。その力を利用して、うまくバランスを調整するためにはたゆまぬ努力が必要であり、今日教えたから明日からできるという代物ではありません。
最適な医療を志すものなら、医師、鍼灸師を問わず、このような現象に少しでも目を向けて、日々の診療を行って貰いたいと思います。身体をよく観察する。当たり前のことですが、常識に囚われて、それができていないのが現状でしょう。