第26回 定例研究会のお知らせ (2012/3/17)
2 月 1st, 2012
テーマ:当事者の視点から考える接触場面の変容 (6)
第26回定例研究会は前回に引き続き、様々な異文化経験を持つ外国人や研究者をお招きし、当事者の視点からみた接触場面の変容について考えたいと思います。
具体的には在日コリアン高齢者と90年以降に来日した中国人居住者のライフストーリーまたはライフ・ヒストリーからみた言語問題や言語管理について、それぞれの研究者からお話を伺うことで接触場面の変容への示唆を考えたいと思います。
多くのみなさまのご参加をお待ちしております。
日時:
2012年3月17日(土) 14:00〜16:00
場所:
千葉大学 (西千葉キャンパス)
社会文化科学系総合研究棟4階 共同研究室2
アクセスマップ:
http://www.chiba-u.ac.jp/access/nishichiba/
キャンパスマップ:
http://www.chiba-u.ac.jp/access/nishichiba/nishichiba_map.html
講師:
1. 猿橋順子(青山学院大学)
「ライフストーリーを紡ぐ場面の言語問題とは何か:在日コリアン高齢者識字生を事例として」
文化庁が推進する地域日本語教育事業は、近年ますます実用性を志向しつつある。制度的には地域日本語教育事業の一環に位置づけられる川崎市ふれあい館の識字教室では、開設当初から多文化共生と批判的識字の観点に立った取り組みが続けられている。すなわち、識字生と識字ボランティアは相互に学び合う存在であること、ただ読み書きを体得するのではなく、非識字を生み出してきた社会歴史的な経緯に関心を払うことである。識字生は生活者として、また歴史の生き証人として、多くの知恵と経験を持った存在なのである。
特に在日コリアン高齢者については、多くの貴重な生活経験を持っていること、学校教育的な読み書き学習が適当ではないこと、老いを生きるという特有の課題をもっていることなどから、識字実践に特別の配慮が模索されてきた。そのなかで、人生を振り返り、来し方を語る、という「語りべ」の営みは、時に心的苦痛を伴いながらも、語り手(識字生)に、老いと向き合い、自身を認め、他者とつながることに意味を見出すきっかけを与えて来た。さらに、語りを通して凝縮された思いを書にすることが、一見、非常に長いプロセスを要するようでありながら、老いてなお文字を学び続けることの意義にもつながっている。
今回の発表では、識字生が生きて来た足跡を、実際に旅したプロジェクト(「在日コリアン一世の炭鉱労働を学ぶ下関:筑豊フィールドワークの旅」)を紹介し、識字活動とライフストーリーを紡ぐことの関係性を述べる。さらに、実際の語りのデータから、ライフストーリーを紡ぐ上での言語問題は何かについて、言語管理理論を援用して抽出した結果を提示し、多文化共生と批判的識字に立脚した識字活動における将来的な課題は何かについて検討していきたい。
2. 鄒暁依 (千葉大学大学院人文社会科学研究科博士後期課程)
「滞日中国人居住者の接触場面への参加と言語管理」
日本にいる中国人は、一般に「旧/老華僑(オールドタイマー)」と「新華僑(ニューカマー)」の二者に大別される。旧華僑は、1世の来日時期が中華人民共和国成立以前であり、日本で生まれた現在の2世・3世は生活習慣や言語など日本人と変わらない。これに対して新華僑は中華人民共和国建国後に来日した中国人のことを指している。1972年の日中国交正常化による留学生派遣が再開され、この世代の留学生のほとんどは公費派遣であり、中国の大学生・大学院生から抜擢されたエリートであった。その後、中国国内における改革開放政策や日本語学校を対象とした就学ビザの簡素化等をうけ、90年代以降、多様な目的を持つ私費留学生が増加し、留学の目的や社会的属性における均質性が大きく失われることとなった。この時期の留学生は就学期間後も就職または結婚などにより在留期間を延長して日本に在留しつづける者が増えており、在留期間の制限がない永住ビザまたは帰化を申請する人も多い。
今回紹介するのは2000年前後に私費留学で来日し、現在は日本に定住を決めた2人の「中国語母語話者」の事例である。本研究は、中国人居住者の接触場面における日本語使用を考察することを目的とする。まず、留学から定住までのライフヒストリー通じて彼女たちの言語使用についての意識を探りだす。そして、実際の接触場面での会話データを使い、居住者の日本語使用における問題やそれに対する言語管理を明らかにする。
配布資料準備の都合上、参加希望者の方は研究会事務局 (muraoka@shd.chiba-u.ac.jp) までご連絡ください。
また、定例研究会の記録については、本ホームページ「d. 定例研究会記録」をご覧ください。