10 月 19

ちょっと風変わりな本が出ました。秦重雄著『挑発ある文学史──誤読され続ける部落/ハンセン病文芸』という本です。

島崎藤村の『破戒』、あるいはハンセン病に対する差別・偏見を助長したと批判され続けている北條民雄『いのちの初夜』、小川正子『小島の春』など、先入観を取り払って丹念に読み返し,再評価した試みです。本ブログ読者ならおなじみの、杉山清一『小説特殊部落』(オールロマンス事件の発端をつくった小説)も俎上に乗せ、事件当時,そして今日の一般的な評価がいかに的外れなものであるか、論じています。

『小説特殊部落』はそのわかりやすい事例ですが、運動や研究者、ときには行政などからも『差別小説』などと断じられている少なくない文芸作品の評価が、一方的なものかよくわかります。本書のサブタイトルには「誤読され続ける」とありますが、誤読というよりも、だいたいは、作品そのものを読むことなく、運動団体による決めつけ、もしくはかつての権威者による評価とそれを受け売りした後世の関係者によりつくりだされた「冤罪」というパターンが多いように感じます。

著者の異常(?)なまでの資料収集(おそらく莫大な費用と時間を費やしているに違いない)と気の遠くなるような読み込み作業による労作です。タイトル通り挑発的で刺激的。少部数発行なのでおそらくすぐに品切れになると思います。ご注文はお早めに。
挑発ある文学史 かもがわ出版刊 定価2800円+税
http://www.kamogawa.co.jp/kensaku/syoseki/ta/0481.html

なお、著者の秦重雄さんは、本ブログ内記事(「オールロマンス」から考える)にもゲストで登場いただいています。
マリードフットノート » 第2回 差別小説でなければならなかった「特殊部落」(前編)

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